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札幌高等裁判所 昭和25年(う)759号 判決

控訴人 被告人 国沢正道

弁護人 板井一治

検察官 木暮洋吉関与

主文

原判決を破棄する。

本件を旭川地方裁判所に移送する。

理由

弁護人板井一治の控訴趣意は同人提出の控訴趣意書記載の通りであるから引用する。

職権を以て調査するに記録によると本件は当初刑法第二百三十五条所定の窃盗罪として起訴せられたのであるが原審第十回公判廷に於て訴因及び罰条を変更し森林法第八十四条第一項第四号に違反する森林窃盗として審判を求め原審はこれを許可した上「被告人が上川郡当麻村中の沢なる同村所有の森林内に集積してあつた山崎義春所有の松丸太(同森林の立木を伐採造材したもの)約十七本、材積合計二十数石を窃取し、馬橇を使用してこれを同村市街地村上木工場に運搬した」という事実を認定し、森林法第八十三条第八十四条第四号に該当する森林窃盗罪として所定刑中懲役刑を選択し被告人を懲役十月に処しているのである。然しながら簡易裁判所は森林窃盗罪につき懲役刑を科する裁判をする権限がないことは裁判所法第三十三条、第三十四条の各規定及び同法以外の他の法律に特にその権限あることを定めた規定がないことに徴し明かであるから原審は不法に管轄を認めて審判したものである。よつて控訴趣意に対する判断をなさず刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十八条第一号により原判決を破棄し同法第三百九十九条本文に従つて事件を管轄第一審裁判所に移送することにし主文の通り判決する。

(裁判長判事 西田賢次郎 判事 河野力 判事 臼居直道)

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